1.音楽理論基礎編

1-1.コード
1-2.ダイアトニックコード、コードの機能
1-3.調の関係
1-4.移調・転調

2.ポップス転調まとめ本編〜3種類の転調〜

転調には何種類あるか。

音名はドからシまで12種類存在し、そのそれぞれを主音として持つ長調と短調が存在するため、調は24種類ある。
つまり、24種類の調の中から転調前と転調後で異なる調を選ぶので、24P2=24×23=552種類あるということになる。
ただし、本サイトでは、次の考え方を採用する。

・絶対でなく相対で考える
転調前と転調後の調の相対的関係で転調を分類する。
例えば、Cメジャー(ハ長調)からGメジャー(ト長調)への転調と、Dメジャー(ニ長調)からAメジャー(イ長調)への転調は、どちらも主音が5度上がる転調、つまり属調への転調であり、転調の種類としては同一とみなす。

・平行調は同一とみなす
例えば、C(ハ長調)とAm(イ短調)は同一とみなす。つまり、「平行調への転調」は転調としてカウントしない。

この考え方によると、調は12種類あり、転調は11種類ある。
そして、これら11種類の中に、よく使われるものとそうでないものや、性質の似たものが存在する。このサイトでは、よく使われる転調(11種類のうち6種類)を以下のように3つに分類して解説する。かっこ内の値は、転調前から転調後への距離を指す。

  • 盛り上げ上昇転調(短2度、長2度)
  • 同主調への転調(短3度、長6度)
  • 属調、下属調への転調(完全4度、完全5度)

2-1.盛り上げ上昇転調

これは、半音もしくは全音上昇するタイプの転調である。
特に楽器経験がない人が「あ、転調した」とか言ったらだいたいこのタイプである。
高音域が苦手な人はカラオケでこの転調に苦しめられることが多いだろう。

転調後の調のまま曲が終わる「上がりっぱなしタイプ」と、もとの調に戻る「戻るタイプ」がある。
「上がりっぱなしタイプ」は最後のサビで盛り上げるために転調するという使われ方が多く、「戻るタイプ」はサビに入るときに転調し、サビの終わりでもとの調に戻るタイプが多い。いずれにせよ、上昇することで高揚感を演出するために使われるため、「盛り上げ上昇転調」と呼んでいる。
半音か全音かは、ボーカルの声域によって決められることが多いと考えられる。
転調時のコード進行は、半音上昇の場合と全音上昇の場合でほぼ変わらない(だから同じ分類にした)。
「もとの調のドミナント→転調後のドミナント」という動きを挟んで転調するパターンが(感覚的に)半分くらいで、それ以外は大体バラバラ、というかいきなり転調する。

例 宇多田ヒカル First Love

3:10頃

First Love

最後に2回繰り返すサビの、1回目から2回目に入るときに半音上昇する、典型的な「盛り上げ上昇転調」だ。
Am7onDは機能としてはD7と同等であり、同様にB♭m7onE♭は機能としてはE♭7と同等である。
つまり、「もとの調のドミナント→転調後のドミナント」という動きを用いるタイプの盛り上げ上昇転調である。

次のような曲でもこのタイプの転調が使用されている。

・ドミナント→ドミナントタイプ

Mr.Children 名もなき詩、Mr.Children くるみ、Mr.Children しるし、Mr.Children HANABI、MISIA Everything、AI Story、米米CLUB 浪漫飛行、スキマスイッチ ボクノート、Boa メリクリ

・セカンダリードミナント(Ⅲ)→セカンダリードミナント(Ⅲ)タイプ

涼宮ハルヒの憂鬱 God knows…、嵐 Love So Sweet(サビ前、戻るタイプ)、40mP からくりピエロ(Cm→Dm戻るタイプ)、KAT-TUN Real Face、中島みゆき 地上の星

・その他

Mr.Children 掌、ポルノグラフィティ アゲハ蝶、ポルノグラフィティ サウダージ、黒うさP 千本桜、サスケ 青いベンチ、椎名林檎 本能、マクロスF ライオン、Every Little Thing Dear my friend、アナと雪の女王 とびら開けて、松浦亜弥 ね〜え

転調のある有名曲まとめ

2-2.同主調への転調(短3度、長6度)

これもポップスで非常に良く使われるタイプの転調である。
このタイプの転調が出て来る曲でもすぐに耳コピできる人や、このタイプの転調を使って曲を作る人を見ると、「お、慣れてるな」という感じがする(個人的感想ですが)。
J-POPだと、「Bメロで転調してサビに入るときに戻る」、「サビで転調してサビ終わりで戻る」、「Cメロや間奏で転調してすぐ元に戻る」といった使われ方が多い。盛り上げるというより、ちょっと雰囲気が変わった感じを演出するために使われる。起承転結の「転」みたいなイメージ。

「同種調への転調」としてここで定義するものには以下の2種類がある。

  • 同種調の平行調への転調(短3度上昇)

同主調というのはCメジャーに対するCマイナーのことであり、ここでは平行調は同一のものとして扱うので、CマイナーはE♭メジャーと同じである。つまり、「CメジャーからE♭メジャー(≒Cマイナー)」のように主音が短3度上昇する転調は「同主調への転調」の一種である。

  • 平行調の同種調への転調(短3度下降=長6度上昇)

CメジャーとAマイナーは平行調であり同一のものとして扱うため、「Cメジャー(≒Aマイナー)からAメジャー」のように主音が短3度下降する転調も「同主調への転調」の一種である。

ただし、大抵の場合は曲の中で両方のタイプが用いられる。つまり、「短3度上に転調して、元に戻る」か、「短3度下に転調して、元に戻る」のいずれかである。

例 サザンオールスターズ TSUNAMI

AメロからBメロに入るときに短3度上に転調し、Bメロの前半から後半に入るときにもとの調に戻る。
Bメロの頭でいきなり転調後の調でのⅡm-Ⅴ-Ⅰという進行が登場するが、近親調なのでこのように転調しても全く違和感がなく、心地よい。
TSUNAMI

Bメロの後半で、DmのセカンダリードミナントであるA7から、Dmに進行せずにDメジャーに進行している。このように、「ドミナントからメジャーコードにもマイナーコードにも進行できる」ことを利用して転調が行われるパターンは他の曲でも多く見られる。
TSUNAMI2

次のような曲でもこのタイプの転調が使われている。

サビ頭で短3度上昇(もしくは同主調の長調→短調)

嵐 One Love、SPEED my graduation、ポルノグラフィティ メリッサ、倉木麻衣 SECRET OF MY HEART、Mr.Children 抱きしめたい、GLAY 誘惑(Bメロ→サビ)、奥 華子 ガーネット(サビ頭で短3度上昇)、AKB48 Everyday、カチューシャ(C→E♭)、モーニング娘。 ハッピーサマーウェディング(Bメロ→サビ D→F)、SPEED WHITE LOVE(E♭m→F#m Bメロ→サビ)、ワンピース believe

サビ頭で短3度下降(もしくは同主調の短調→長調)

B’z 熱き鼓動の果て、B’z ALONE(Bメロ→サビ)、FIELD OF VIEW DAN DAN心魅かれてく、AKB48 ポニーテールとシュシュ(A→F#)★、AKB48 涙サプライズ、安室奈美恵 CAN YOU CELEBRATE、柴崎コウ かたちあるもの

その他(Bメロで転調、Cメロで転調など)

アラジン a whole new world(短3度上昇)、美女と野獣 (Aメロ F→D)、浜崎あゆみ SEASONS(Aメロ→BメロDm→Fm)、浜崎あゆみ M、浜崎あゆみ Dearest、浜崎あゆみBoys&Girls(F→D→B→G#→F)、松本梨香 めざせポケモンマスター(サビ→Aメロ)、平井堅 瞳を閉じて(間奏)、Mr.Children NOT FOUND、Mr.Children HERO Cメロ、、合唱曲 COSMOS、ゆず 飛べない鳥、湘南乃風 睡蓮花、コブクロ 桜、スキマスイッチ 奏(短3度上昇)、星のカービィ グリーングリーンズ、モーツァルト トルコ行進曲

転調のある有名曲まとめ

2-3.属調、下属調への転調(完全4度、完全5度)

このタイプは、転調したことに一番気づきにくい転調である。なぜなら、転調しても調号の数が1つしか変わらず、関係の近い調同士の転調であるから。
記憶で曲を弾くとき、この転調で混乱しやすい。また、作曲時にこの転調を綺麗に使う人を見ると作曲上級者感がある(気がする)。
ちなみに、このタイプの転調はクラシックにも非常に多い。

ポップスでは、「同主調への転調」と同様に、「Bメロに入るときに転調してBメロの最後に元に戻る」というような使われ方が多い。盛り上げるというより、ちょっと雰囲気が変わった感じを演出するために使われるのだが、「同主調への転調」と比べて「ちょっと変わった感じ」が弱く、ほんのり変化する。
次のような曲でこのタイプの転調が使われている。

アナと雪の女王 Let it go(A♭→E♭→A♭)★
45秒頃

高橋洋子 魂のルフラン(G#m→C#m)、SMAP 世界にひとつだけの花(A→D→A)、ポルノグラフィティ ヴォイス(G→D)、モーニング娘。 I WISH(Aメロ→Bメロ A♭→E♭)、マクロスF ライオン(Aメロ→サビAm→Em)
B’z 愛のままにわがままに 僕は君だけを傷つけない(F#m→Bm→F#m)、槇原敬之 もう恋なんてしない(E→B→E)、浜崎あゆみ evolution(B→F#)、浜崎あゆみ No way to say(Bメロ→サビ C#→G#)、美女と野獣(2サビ後 D→G)、John Lennon Happy Christmas、CHAGE and ASKA SAY YES(Bメロ E♭→B♭)

転調のある有名曲まとめ